このストーリーはAIで作成されており、フィクションです。
第39本目：「理科準備室の静寂」
起：理科室の隣で
高校2年生の小野寺隼人は、放課後になると理科準備室に立ち寄る癖があった。化学が得意で、何かと理科の先生に頼まれて実験器具の整理を手伝うことが多かったからだ。
ある日の放課後、いつものように準備室に行くと、同じクラスの杉本沙希が試験管を眺めながら座っていた。
「……杉本？なんでここにいるんだ？」と聞くと、沙希は少し驚いた様子で顔を上げた。
「なんとなく、静かで落ち着くから。小野寺くんは？」
「先生に頼まれて器具の片付け。よくここにいるの？」
「うん。時々だけど。」
二人は特別仲が良いわけでもなく、それまでクラスでほとんど話したことがなかった。それでも、隼人は彼女がここで過ごす理由をどこかで理解しているような気がした。
承：実験から始まる会話
それ以来、隼人が準備室に行くと沙希がいることが増えた。最初はお互いに気まずい沈黙が続いていたが、あるとき隼人がふと思いついて声をかけた。
「杉本、これやってみるか？」そう言って取り出したのは、色水を使った簡単な化学実験だった。
「やり方は簡単。これを混ぜると色が変わるんだ。」隼人が説明すると、沙希は興味津々で「やってみたい」と言った。
試験管に液体を混ぜていくと、透明だった液体が鮮やかな青に変わった。沙希は驚いたように目を輝かせ、「すごいね、こんなの初めて見た！」と笑った。
その笑顔に、隼人は「もっと簡単な実験、教えてやろうか」と言い、自分でも意外なほど楽しくなっていることに気づいた。
転：隠された想い
実験を通じて話すうち、沙希が理科が得意ではないことや、自分に自信が持てないという悩みを抱えていることを隼人は知った。
「クラスの中で浮いてる気がして……だから、こういう場所のほうが落ち着くんだ。」沙希がぽつりと呟いた。
「俺だって別にクラスで目立つわけじゃないよ。こうやって準備室にいるくらいだし。」隼人は苦笑しながら答えた。
「でも、小野寺くんは何かをちゃんとやってるよね。私は……ただここにいるだけで。」
「そんなことないだろ。ここでこうしてるのが、杉本にとって大事なら、それでいいんじゃないか？」
その言葉に、沙希は少し照れくさそうに笑い、「ありがとう」と小さく呟いた。
結：理科室から見えた景色
季節が変わり、二人が準備室で過ごす時間は自然と増えていった。沙希は隼人から色々な実験を教えてもらい、少しずつ理科への苦手意識を克服していった。
ある日、沙希がふと尋ねた。「小野寺くん、将来の夢とかあるの？」
「俺は化学系の大学に行きたいと思ってる。でも、まだ具体的には決まってないな。」隼人が答えると、沙希は「なんか、そういう風に好きなことがはっきりしてるの、すごいな」と感心したように言った。
「杉本だって、これから見つければいいじゃん。時間はまだあるんだし。」
その言葉に背中を押されるような気がして、沙希は「うん、そうだね」と笑顔を見せた。
理科準備室での時間は、二人にとってただの「静かな場所」ではなく、少しずつ自分を見つめ直す場所へと変わっていった。
ー完ー